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東京高等裁判所 昭和46年(ネ)2330号 判決 1972年4月27日

控訴人 小松崎進 外一名

被控訴人 株式会社アサヒブロイラー

主文

本件控訴をいずれも棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実

控訴人ら代理人は「原判決を取消す。被控訴人の請求をいずれも棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張及び証拠の関係は、双方各代理人が当審において次のとおり陳述したほかは、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

(控訴人の主張)

(一)株式会社日本食資材(以下日本食資材という)は昭和四五年一二月一九日水戸地方裁判所において更生手続開始決定がなされ、同時に更生債権及び更生担保権の届出期間を昭和四六年二月二七日までと、並びに更生債権及び更生担保権調査の期日を同年四月一四日午後一時と定められたところ、被控訴人は右更生債権届出期間内にその届出をなさず、その調査期日の経過により、日本食資材に対する請求債権は全額失権した。従つて連帯保証人たる控訴人らの債務もこれによつて消滅した。

(二)原審でした相殺の抗弁は右(一)の主張の予備的主張とする。

(被控訴人の主張)

(一)原判決三枚目裏八行目に「仮に右事実が認められないとしても、右金一〇〇万円は被控訴人と日本食資材間の食鳥肉の継続的売買契約により生ずるであろう被控訴人の日本食資材に対する債務金の前払(資金援助を含む)として支払つたものであるが、日本食資材は多数の負債を生じ支払を停止したため、被控訴人は昭和四五年三月五日約定に基づき、日本食資材に対し右継続的売買契約を解除する旨の意思表示をした。」と加える。

(二)控訴人右(一)の主張事実中日本食資材が昭和四五年一二月一九日水戸地方裁判所において更生手続開始決定を受け、更生債権届出期間が同四六年二月二七日と定められたが、被控訴人は右期間中に届出をしなかつたため、被控訴人の有する右債権は右期間の経過に伴い失権したことは認める。しかし被控訴人に対する控訴人らの本件保証債務は、そのため何らの影響を受けるものではなく、従つて被控訴人は控訴人らに対し本件保証債務全額の履行を求めることができる。

理由

当裁判所もまた、原判決と同様、被控訴人の本訴請求はいずれもこれを正当として認容すべきものと判断するものであつてその理由は次のとおり付加するほかは、原判決の理由と同一であるから、その説示を引用する。

右引用の原判決の認定するところによると、被控訴人は昭和四五年一二月一九日以前の原因に基づき日本食資材に対し被控訴人主張のとおりの売掛金等債権を有することが明らかであるところ、日本食資材が前記日時水戸地方裁判所の更生手続開始決定を受け、更生債権届出期間は昭和四六年二月二七日と定められたが、被控訴人は右期間中に届出をしなかつたため、被控訴人の有する右債権は失権するにいたつたことは当事者間に争ない。しかし会社更生法(以下法という)は更生債権者が更生手続に参加すると否とはその自由にまかせ(法一二四条)、ただこれに参加しない場合は更生会社の財産からはその弁済を受けえられず(同一一二条)、その意味で失権(すなわち一種の自然債務となるものと解される)するものとしているところ、右更生債権が保証、連帯債務もしくは物上保証等会社財産以外のものによつて確保されているときは、更生債権者はそれによつて債権の満足をうることはなんら妨げられないものというべきである。けだしこれによつて会社財産を減少せしめ、その再建を困難ならしめるおそれはないからであり、そのことはまた法二四〇条二項の趣旨からもこれをうかがいうるところである。従つて更生債権が右の意味において失権したとしても保証債務には影響がないものというべきであり、このことは保証債務のいわゆる附従性に反するものではない。されば本件において被控訴人が前記更生債権届出期間中に届出をしなかつたためその日本食資材に対する債権が失権したからといつて、そのため被控訴人に対する控訴人らの本件保証債務に消長を及ぼすものではなく、控訴人らは依然としてその債務全額について履行の責に任ずべきである。

よつてこれと結論を同じくする原判決は相当であり、本件控訴はいずれも理由がないので、これを棄却することとし、控訴費用の負担について民事訴訟法第九五条、第八九条、第九三条第一項を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 浅沼武 田畑常彦 加藤宏)

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